この映画について

1984年、春──
僕たちは夢中で
夢を叶えようとしていたね
1984年、4月。
大学生を中心とする自主映画サークル
「Peppermint Film Workers since 1984」
が誕生しました。
その第1回作品がこの映画「Too far away」です。
とにかく自分たちの手で『映画』を作ってみたかった、
それだけで突っ走った未熟な作品です。
でも、フィルムに記録された“想い”は本物です。
制作から35年を記念して2019年中にデジタル化する予定でしたが、とんでもないトラブルに巻き込まれ、やむなく2020年のずれ込まざるを得なくなった結果、中途半端な36周年記念になってしまいました。
デジタル化にあたって、当時拙かったタイトルを差し替え、当時入れられなかったクレジットを追加し、当時制作途中で力尽きてしまったエンドロールを追加していますが、編集点は一切いじっていません。
また、このサイトでは、発掘された過去の資料、記録なども紹介していますので、8mmフィルムで映画を作ると言うことはどういうことか、を知ってもらえたら嬉しいです。
1984年制作/8mm/18コマ/66分/カラー/モノラル/スタンダードサイズ
© 1984,2020 Peppermint Film Workers since 1984. All rights reserved.
ストーリー

東京の理系の大学に通う伊田麻利子(19)には女優になると言う夢があった。
同じ学部の槇峰亮(20)とは、友達以上恋人未満の緩い関係にあったが、周囲の仲間からは相思相愛なのはバレバレだった。緩い関係から進展しないのは、ひとえに亮の優柔不断さの結果だった。
ある朝、麻利子が応募した劇場映画のオーディションに合格したという連絡が入る。喜ぶ亮や仲間たちだったが、亮はお祝いの言葉さえうまく伝えられず麻利子と喧嘩になってしまう。
このチャンスを活かそうと頑張る麻利子だったが、監督の三次裕時(26)は役の降板をちらつかせ麻利子を口説いてくる。しかし毅然と突っぱねる麻利子。
そんな事情を知らない亮は麻利子の20才の誕生日に横浜にドライブに行くのだが、やはりくだらないことで喧嘩になってしまう。
ある日、実家の麻利子の母親から手紙が届く。父親の会社が倒産し、大学を辞めて実家に戻ることを促されたようだ。このことを麻利子は高校時代からの友人の高宮美土里(19)にだけ打ち明けると、亮に相談してみたらとアドバイスを受ける。

麻利子はお酒持参で亮のアパートに行くが、勘の鈍い亮はそのお酒に酔いつぶれてしまい、ちゃんとしたケジメがつかないまま麻利子はアパートを後にする。
数日後、麻利子が三次とホテルへ行ったという噂が大学を駆け巡る。これが原因で麻利子と亮との距離は遥か遠くになってしまう。
更に最悪なことに、麻利子の役が確実になるどころか逆に役を下ろされることになった。案の定、監督の三次に騙されていたのだ。
失意の麻利子は大学も辞めアパートも引き払い、亮にも仲間たちにも何も告げず姿を消してしまう。必死に探す亮と仲間たちだったが、麻利子の行方は杳として知れない。
夜の11時を回るころ、探し疲れた仲間たちは亮の部屋に集まっていた。そこへ美土里が駆け込んでくる。「麻利子が故郷へ帰っちゃう!」
せめて見送りに行けと言う仲間に亮がきっぱりと言い捨てる。「見送りなんてしない!」
23:25。麻利子を乗せた大垣夜行は、静かに東京を離れていく──
キャスト

酒井真美
演じた“麻利子”は不愛想な役柄だが、素顔の彼女は明るてよく笑うほんわかした雰囲気のキュートな女の子で、常に現場を和ませてくれていた。約束は絶対守り、決して弱音を吐かないとても芯の強いしっかり者で、安心して主役を任せることが出来た。本当にありがとう。
as 伊田麻利子
東京の理系の大学に通う女子大生。岐阜県の大垣から上京し一人暮らし。女優になる夢を叶えるために三次裕時が監督する映画のオーディションに応募する。

松原 主
高校の頃からいくつもの自主映画に出演していた彼は、飄々と役をこなせるとてもセンスのいい役者さん。僕は彼の出演作を見てこの映画への出演をお願いした。思惑は当たり、彼は見事に“亮”を演じきってくれた。文句も言わず過酷なスケジュールに付き合ってくれて感謝。
as 槙峰 亮
麻利子と同じ大学に通う大学生。麻利子のことが好きなのだが、不器用でうまく伝えられない。

杉 泰孝
“三次”はこの映画の中で唯一のイヤな奴の役だったが、快く引き受けてくれた良い人。ご本人はリアルで役者を目指しているとても真面目な人で、本来ならこんな汚れ役など似合わない好青年。でもこの役を杉くんが引き受けてくれなかったら、たぶん映画はグダグダになっていたと思う。本当に感謝している。
as 三次裕時
麻利子が応募したオーディションの映画の監督。女癖が悪い。

富田早苗
OLをしながらリアルで女優を目指して頑張っていた、僕よりほんの少し年上のお姉さん。だもんで演技に関しては完全に信頼しお任せしていた。出番こそ少ないが、富田さんが現場にいるととても安心できる、そんなオーラを醸し出す人だった。
as 緑川怜子
三次が監督する映画の主演女優。麻利子に色々とアドバイスをする。

布川智治
熱い男“吾平”を演じる彼は、リアルでも正義感の強い真面目な男で、“吾平”と言う役に真摯に向き合って役を作っていた。もっとも彼の口ひげは役作りではなく日本ラグビーのレジェンド、ミスター・ラグビーこと平尾誠二氏を意識していたと思われる。
as 竹中吾平
親分肌でけんかっ早い熱血漢。亮たちのグループでは頼れるリーダー的存在。

伊神恵子
ひとり上京して東京で夢を叶えようとしている“美土里”はきちんと自分を持っている人。演者がそれを元から持ち合わせていれば、そういう設定の“美土里”を素で演じられるはず。だから伊神さんにお願いした。彼女はその期待にきちんと応えてくれた。
as 高宮美土里
麻利子の高校の時の同級生。歌手になる夢を叶えるため上京しいくつものライブハウスで歌っている。麻利子の東京での唯一の理解者。

浜島 力
小銭にせこくお調子者の“貴久”の役に彼を充てたのは、決してそういう人間だからではない。確かに明るくジョークを連発するムードメーカーではあったが、何事にも一所懸命な彼なら、きっと“貴久”を演じられると信じたからだ。
as 倉野貴久
小銭にせこいお調子者。でも友達はとても大切にし、頼まれれば決してイヤと言わない。

内田千尋
内田さんは当時、高校1年生だった。大学1年の役が出来るか少し心配したが、言われなければ高校生とは思わないくらいにしっかり演じていたと思う。諸般の事情でアフレコに参加できず、声は大畑万希子さんが代わりに充ててくれた。
as 中山香子
とにかくおしゃべりでうわさ好き。そのせいで麻利子と亮の関係をこじらせてしまう。

天野智子
たまたま内田さんと同じ高校1年生。現場では内田さんと一緒にはしゃぎまわって2人揃うと大騒ぎだった。それでも役に対してはとても真面目に取り組んで大学生役もそれとなくこなして、夜遅い撮影も頑張って参加してくれた。
as 永尾恵美子
とても無邪気なおしゃべり好きな女の子。香子と一緒に何でもしゃべって広めてしまう。

西 了二
自分からぐいぐい行くタイプではなかったが、役の“亀川”と違って存在感があった。冷静で的確な判断が出来、とても信頼できる男だった。画面上ではあまり目立たないが、この映画作りで大変重要な存在だった。
as 亀川博之
無口で目立たないが、いつもグループの中にいる不思議な存在。
芸能事務所に所属していたセミプロの青年で、同時期に別の自主映画に主演したので、こちらはちょい役。
製作などスタッフとして大活躍する傍ら、バーテン以外にもあちこちに出演。
今回はワンシーンのみ出演。本当はちゃんとした役をこなせる人だったのに、申し訳ない。
本人はシャイな性格なので、怪しい役柄がますます怪しく見えた。
残念なことに出番は少なかったけど、間違いなく実力はある女優さんだった。
人が足りなくなると必ず現れ、どんな役もそれなりにこなしてしまう器用な人。
製作とかスタッフとして大忙しだったが、エキストラとしても頑張ってくれた。
スタッフとして手伝ってくれた上、同時期に別の自主映画で主演も。こちらではちょい役で参加。
とても大人しい物静かな人ながら、頑張ってくれてました。
キャスティングには大変苦労しました。当初のメンバーは大学の友人がメインだったのですが、全員、映画初体験のうえ演技未経験。そのうえ女子がいない(笑)。
そこで雑誌『ぴあ』や創刊間もない『De☆View』(デビュー)で広く参加者を募集しました。当時は自主映画全盛の時期で、下は16才の高校生から上は23才の社会人まで。思った以上にたくさんの人が応募してくれました。その都度、連絡をくれた人と直接会って映画の内容を説明して、条件を納得した上で参加してくれる人だけが残りました。
そして、会った時の印象や演技経験、意気込みなどを踏まえて役を決めていきました。絶対に実力があるのに様々な要因からちょい役になってしまったり、演技より雰囲気でキャスティングしてしまったり、割り振られた配役には色々と思うところがあったでしょうが、それでもみんなが真剣に取り組んでくれたお蔭で無事に映画を完成させることができました。
改めて全ての出演者に心から感謝いたします。本当にありがとうございました。
スタッフ

製作●渡辺浩次、宮岸雅弘
脚本●戸辺千尋
脚本協力●おおの藻梨以、男沢暢之、宮岸雅弘
撮影●桑田健司
編集●戸辺千尋
照明●渡辺浩次
記録●大畑万希子
アフレコ●桑田健司
録音・効果●渡辺浩次
助監督●杉 泰孝、松原 主
大垣ロケ助監督●浜 宏高、阿部圭子
横浜ロケ助監督●浜島 力、伊神恵子
車輛●宮岸雅弘
装飾●布川智治
照明助手●富田早苗
記録助手●天野智子、内田千尋
アフレコ助手●山崎昭弘
制作助手●西 了二
メイク●米倉麻紀、木村美智代
フリーBGM●フリーBGM・音楽素材MusMus https://musmus.main.jp/
甘茶の音楽工房 https://amachamusic.chagasi.com/
撮影協力●ありす、Enfant、Pine、CREATE INN、酒蔵赤天狗、特殊法人日本国有鉄道、大垣駅、東京駅、めぞんどぐりむ、みゆき荘、工学院大学、東京学芸大学、横浜市港の見える丘公園、府中グリーンプラザ、府中市中央文化センター、八王子市大和田市民センター
協力●新井千秋、加藤賢治、宮原俊夫、酒井真美、福田克史、浅井香代、大室美紀、斎藤誠治、柿沢達彦、佐藤博幸、中村匡志、高橋文雄、井上幸晴、斉木裕美、小野宏一、勝部まや、渡辺 勇、渡辺ユリ、諸橋美香子
製作●Peppermint Film Workers since 1984
監督●戸辺千尋
スタッフの中で、自主映画制作の経験があるのは、桑田健司、松原主、大畑万希子、渡辺浩次、戸辺千尋(敬称略)くらいで、あとの人はほぼ未経験でした。主要なところが重複してしまっているのはそんな理由です。
ただ、撮影を重ねていくうちに、みんなそれぞれ自分の出来ること得意なことを見つけ、いつのまにやら現場がスムースに回るようになっていくから不思議なものです。
みんなが貴重な時間を捧げて本気で作った映画が「Too far away」です。
改めて全ての関係者に心から感謝いたします。本当にありがとうございました。